「南京事件 国民党極秘文書から読み解く」の一節 その2

2012.09.07.18:11

外国人が多くの殺害を目撃したのかどうかを検討するうえで、最も基礎的な根本資料は「市民重大被害報告」であろう。
これは、南京在住の外国人からなる国際委員会が、南京の不祥事を日本大使館に届けた市民被害届である。

この「市民重大被害報告」がスマイス教授の手で1938年2月に1セットにまとめられ、その約3割(全444件中の123件)が『戦争とは何か』に付録として収録された。

その後、それは、蒋介石の軍事委員会に直属する国際問題研究所の監修のもと、徐淑希編『南京安全地帯の記録』(英文)として1939年夏に出版された。

したがって今日でも「市民重大被害報告」は『南京安全地帯の記録』のなかに見ることができる。

そこで、『南京安全地帯の記録』にもとづいて、スティール記者やダーディン記者が問題にした南京陥落後3日間をみてみよう。
国際委員会が日本大使館に届けた事例のうち、2つを引用しておく。

(略)

ここで注目しておくべきは、この2つの事例を読んでも分かるように、誰がこの事件を目撃し、誰が第一発見者となり、誰が報告し、誰が記録したのかが、記述されていないことである。

国際委員会は「これらの事例は、国際委員会の外国人委員または職員により確認済みであります。謹んで提出いたします。ルイス・スマイス」というふうに書いているが、肝心の日本兵が行ったという確証はない。

ともあれ、このように書かれた「市民重大被害報告」から、3日間の全事件を採り上げてみると、次のようになる。
以下は冨沢繁信『南京事件の核心』巻末の「被害事例の日計表」にもとづく。

●12月13日は、殺人ゼロ件、強姦1件、略奪2件、
放火ゼロ件、拉致1件、障害1件、侵入ゼロ件であった。

●12月14日は、殺人1件、強姦4件、略奪3件、
放火ゼロ件、拉致1件、傷害ゼロ件、侵入1件であった。

●12月15日は、殺人4件、強姦5件、略奪5件、
放火ゼロ件、拉致1件、傷害5件、侵入2件であった。

目撃者が判明している殺人事件はゼロ件であった。
スティール記者やダーディン記者が報じた「外国人はたくさんの殺害を目撃した」という表現は事実にもとづいていないことが、はっきりと分かるであろう。

しかし、洩れがあるといけない。
そこで念のため「ラーベ日記」「ヴォートリン日記」など当時の記録や「アメリカ関係資料集」に出てくる殺人の記録をすべて収録した冨沢繁信「被害事例の日計表」を見てみたが、当時の日中英独の記録を全部集計しても、12月13日の殺人事件は3件、14日が4件、15日が8件であった。しかし、それでさえも目撃された殺人事件はゼロなのである。

マギー牧師は東京裁判に出廷して、多くの殺人が南京で起きたと証言した。しかし、実際のところ何件の殺人を目撃したのかと問われると、牧師は「ただ僅か一人の事件だけは自分で目撃しました」と証言した。
ところが彼は日記に「その殺人が現実に起きたとき、われわれはそれを見ていなかった」と書いている。
そうなると、マギー牧師が見たと証言した「一人」の事件ですら疑われてくるのである。

このように3つの視点からアメリカの新聞記事を検証した結果、殺人事件にかんするかぎり、日本軍による市民殺害を裏付ける証拠は当時のどの記録からも見出すことはできない。
スティール記者やダーディン記者が、外国人は南京で頻発する市民殺害を目撃したと書いたのは虚報であったとしか言いようがない。


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