GHQ焚書図書開封(6)「征野千里」3:嬉しいあだ名『兄さん』『お母さん』『嬶』

2013.08.06.18:55

戦場手記『征野千里』 中野部隊上等兵 谷口勝著 新潮社 昭和13年12月発行より



■支那事変戦場へ向う

◆嬉しいあだ名『兄さん』『お母さん』『嬶』

「オーイ、うちの嬶(カカア)はいないか」と荒木准尉が呼ばれた。すぐ私が飛んで行く。○○に上陸して、再び汽車に乗って私たちは何処とも知れず運ばれていた。
 私は荒木准尉の将校当番だった。それで嬶なんである。汽車も幹部と一緒に二等車に乗って私は少々得意であった。石原上等兵も本部付のラッパ手でやはり二等車の嬶組だ。・・・・・
 小林伍長は新編成以前からの私の友達だ。色が白くて、丸顔で、優しい男振りの兵隊さんだった。小林伍長の任務は衛生兵だったので、これもまた本部付き、すなわち二等車の嬶組であった。
 小林伍長は顔が優しかったように性質も優しくて綿密だった。細かいところまで気がついて、私や石原上等兵の持っていないものは小林伍長のところへ行けば必ず持っているという風だった。だから私たちは小林伍長を『お母さん』と呼んだ。あまっちゃれた言葉で兵営内の言葉には似つかわしくないものだったが、それだけに『お母さん』というアダナを口にすることは、ホッと息を抜くような、なにか自慰的な気持で楽しかった。
『兄さん』とアダナされる石原上等兵は無遠慮で大まかで、そして『お母さん』は気が弱くて綿密で、この真ん中へ入って『嬶』と呼ばれる私は、温かい蒲団にでもくるまったように楽しかった。

 汽車は歓声と旗の波に埋められた駅をいくつも通過して走っていた。とうとうある駅で汽車が停った。歓声と旗が窓々から流れ込むように溢れている。洋服を着たり、綺麗な着物を着た人たちに混って、朝鮮の白い着物をつけた人々が一生懸命になにかを叫んで旗を振っていた。私はオヤ、と思った。白い着物を付けた人々は汽車が再び動き出すとドッと、堰を破ったように汽車の窓々へ飛んで来て、なにか口々に叫びながら汽車の中へ旗やいろんなものを投げ込んだ。私のところへも一つ白い布切が投げ込まれてきた。同時に、アクセントの強い癖のある語調で
「兵隊しゃん、しっかりやって下しゃい」
という叫びが耳を打った。
 汽車の窓を旗と人の波がさッさッと過ぎて行った。私は投げ込まれた白い布を拾った。立派に千の赤い糸で『尽忠報国』と縫いとった千人針だった。
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