スポンサーサイト

--.--.--.--:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

GHQ焚書図書開封(17)「征野千里」14:汚れた戎衣に誇り

2014.09.16.19:18

汚れた戎衣に誇り
汽車は私たちがニケ月余を泥と弾雨に戦って来た大陸の野を一瞬に走って、大きな街に入って停った。「天津だ天津だ」といってみんな騒ぎたてた。実にニケ月ぶりに見る天津だった。私たちは懐かしい天津の駅に見惚れる前に、ドーッと売店へ押しかけて行った。天津をニケ月ぶりで見ると同じに甘納豆やパイナップルの缶詰などもニケ月ぶりの味覚だった。私たちの軍帽も軍服もみんな泥と埃でクチャクチャになっている。それを見て駅にいた新しい兵隊や邦人たちが「前線の兵隊だ前線の兵隊だ」といって騒ぎたてた。私たちははじめて汚れた自分達の服を顧みて、何か誇らかなものを感じるのだった。楽しい騒ぎも僅か五分間だった。再び列車は走って大沽に着いた。

ここで汽車を捨てると私たちに戦地へ来てはじめての慰問袋が渡った。慰問袋は四人に一つ平均だったのを、私は石原上等兵と小林伍長と三人で一つだけを貰った。石原上等兵は慰問袋を手にして「俺はよう開けん、誰か開けてくれ」といった。全くその感じだった。何か開けるのに手が震える思いだった。小林伍長が慰問袋を開けにかかった。額を集めた三人の目の前へ慰問袋が口を開くと大きな足のワラジがコロリと転がり出て来た。しばらくは三人とも誰も声を出さなかった。やがて三人が次々と顔を見合わせた。そしてまた黙ってワラジを見つめた。ワラジは藁の匂いがプンプンするように真新しかった。そして足袋だったら十一文のを履く足にちょうどいい程に大きかった。ワラジには一通の手紙が添えてあった。

『(前略)靴は豆が出来ます、地下足袋は水虫になります。若しやと思ってこのワラジ御入れしておきました、いま母と一緒に作ったばかりのところです』

・・・・一足のワラジはどうして三人の足にあてがおうか。これは三人のお守りにしよう。新戦場へのマスコットともなろう。石原上等兵が呼びたてられてラッパを吹いた、ドヤドヤと集った戦友たちはみんな目を真赤にしていた。それぞれの慰問袋でそれぞれ兵隊が、みんな泣かされたに違いない。

慰問袋が持って来た新しい感激を体の中にしまって、部隊はぞろぞろと船に乗った。船尾には『○○丸』と白い文字が太々と書かれてあった。馬も積み、小さな砲も積み、自動車さえもがそのままそっくりこれに積み込まれた。・・・・

この近代的大部隊の輸送船に真新しいワラジが一足積み込まれたことは、私たち三人以外には誰も知るまい。ワラジはしみじみとした祖国の真心を持ってギッシリならぶ近代兵器の中にただ一足混っていた。やがて離れるであろう大沽の街なみを眺めて、そして街の向うに煙っている大陸の風物を眺めて、戦い来し京漢線の戦線を遥かに思わないではいられなかった。廊坊の真新しい墓標にはじまったこの戦線の幾ケ月――いつかまた自らもあの墓標に終る日があろう。汽笛も鳴らないで、船は黙って港を出た。

野戦局で慰問袋を受取る勇士たち



戦場手記「征野千里」中野部隊上等兵谷口勝著(昭和十三年十二月新潮社発行)より
スポンサーサイト

comment

Secret

プロフィール

南知隊!

Author:南知隊!
~南京の真実を知らせ隊~
略称『南知隊』
『南京大虐殺』と言う歴史歪曲による不当な冤罪を多くの人達にしってもらおう!
そんな想いを持った人々の集合ブログです。

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
南知隊ブロの中で検索したい事柄があった場合、↓の窓に語句を入力して「検索」ボタンを押すと、該当の記事が出ます。
通州事件の真実
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。