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北村稔著「「南京事件」の探究―その実像をもとめて」

2014.11.02.07:55

「南京事件」の探究 -その実像をもとめて(文春新書)
北村 稔
定価:本体680円+税
発売日:2001年11月20日

日本を揺るがす大論争に歴史学の光をあてる
まず結論ありの“神学論争”をやめ、大虐殺があったという「認識」がどのように出現したのかを、歴史学の基本に戻って分析検証する


書評 (『中国情報源2004-2005年版』193ページから転載)中村公省/21世紀中国総研事務局長
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北村 稔著『「南京事件」探究――その実像を求めて』が英語に翻訳されて出版された。著者から贈呈を受け、慶賀に堪えない。タイトルは『南京の政治学 偏見なき探究』となっているが、原著に忠実な英訳である。巻末にインデックスが付加されているのは、ありがたい。折りしも、日中の学者による歴史共同研究が始まった。こういう場当たり的な政治ショウが歴史研究に対して何の成果ももたらさないことは、過去の経験に照らして明らかである。

百の政治ショウよりも、巨万の無駄金よりも、一冊の本『「南京事件」探究――その実像を求めて』The Politics of Nanjing: An Impartial Investigation を熟読玩味すべ し。
以下は、私の短評再録である。

著者は、「南京で大虐殺があった」という認識が何処から、どのような経緯で出来あがってきたかを探究している。「南京事件」を確定したのは、南京における戦犯裁判と東京における戦犯裁判であったが、その結論は以下の如くである。

南京戦犯裁判―――三十万人以上の中国人が殺害された。
東京戦犯裁判―――殺害者は十万人以上。

二つの裁判の間で殺害者数の大幅な食い違いがあるが、これは当時の南京の人口が20万から30万であったという事実の前に、東京判事が論拠は不明なまま人数を割り引いたためである。のっけからミステリアスだが、とまれ殺害者数の主だった証拠資料は著者によれば3グループある。

①日本軍占領下の南京に留まった欧米人や中国人が、
  日本兵の行為を告発した書物や記事
―――これらの資料には南京で大虐殺が発生したという
       記載は見いだせない。
②1946年に国民政府が南京で行った現地調査
  (住民及び慈善団体の証言と遺骨発掘調査)の報告
 ―――これらの資料により「大虐殺」の実在が確定された。
③南京と東京の裁判で行われた欧米人と中国人の証言
   ―――これらの資料は①と②の内容を併せ持っている。

木を見て森を見ないという言葉があるが、歴史探究においては逆に森を見ないで木を見る、木を見ないで枝を見る、葉を見るという方法が有効である。著者は上記の原資料を可能な限り渉猟し、眼光紙背に徹して読み抜いていく。その探究及び認識深化の過程が本書の叙述と同時進行形で表現されており、あたかも推理探偵小説を読むようである。

例えば、上記①の資料のひとつWHAT WAR MEANSの著者であるマンチェスター・ガーディアン特派員ティンパーリーが実は国民党中央宣伝部顧問であったという決定的証拠を見つけ出す経緯は実にスリリングである。

上記②の南京現地調査報告に対する結論のほうは、こうなっている。「南京の裁判の判決文にいう殺害者三十万人余は、種々の資料から窺える当時の実情との間に整合性を欠く。有体に言えば『初めに三十万人ありき』で、これを裏付ける証拠群は、三十万人という数字に合わせて作られた感がある。『南京大虐殺三十万人』は、すでに戦争中から準備されていた戦犯裁判のシナリオに沿って、日本戦争犯罪を告発するためのハイライトとして作りあげられたと言わざるを得ない」。(178-179頁)

この南京現地調査報告の全文は未発表で南京の歴史答案档館に秘蔵されている可能性が高い。「正しい歴史認識」のための決定的証拠は政治目的のために封印されていると見られるのである。

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